スペキュラティヴデザイナー・川崎和也が挑む AIとサステイナブルファッション

loftwork.com ニュース・コラムより

執筆:Kassy Cho 翻訳:杉田 真理子

スペキュラティヴデザイナー・川崎和也さんは、子供の頃から、規則というものが大嫌いでした。特に、生徒に同じ制服を着させる校則に、満足がいかなかったといいます。
高校に在学中、自らユニフォームショップに問い合わせをし、コラボレーションが出来ないか問い合わせたこともありました。制服のジャケットに刺繍をいれ、シャツの丈を少し短くすることで、自身の制服をカスタマイズすることを思いついたのです。

幼い頃からずっとファッションが好きだったという川崎さんは、2012年に出身地である新潟から上京、現在28歳です。慶應義塾大学に通いながら、生産過程における無駄を出さないサステイナブルなファッションのあり方を考えることに情熱を燃やすようになりました。
今年2019年には、日本を代表するビジョンや才能の持ち主を30人選出する企画「30 UNDER 30 JAPAN 2019」1で、サイエンス部門を受賞。99のデザインリサーチの実践例をまとめた『SPECULATIONS 人間中心主義のデザインをこえて』2の監修も務めています。
バイオアーティスト・福原志保さんとの出会いも、大学に通っていたこの時期のことでした。故人のDNAを木に埋め込んで「生きた墓標」とする福原さんのプロジェクトに触発され、バイオテクノロジーを導入することで、よりサステイナブルなファッションをつくることを思いつきました。
2017年、3D技術とバイオマテリアルを組み合わせた作品『バイオロジカル・テイラーメイド』で、川崎さんはYouFab Global Creative Awards 20173でFinalistに選出されました。この作品は、バクテリアセルロース*と3D技術を組み合わせて制作した、テイラードスーツです。バクテリアセルロースを培養し人間の身体に最適化させることで、製造過程でゴミを一切出さないことに成功しました。
「日本のデザイナーとして、YouFab Global Creative Awardsの取り組みには驚くものがありました」と川崎さんは語ります。「審査員を含め、受賞者は非常に国際的で、将来の海外とのコラボレーションの可能性が拓けました。」

「このジャケットは生きています。眠っている状態に近いですね」と川崎さんは笑います。
買い物が全てオンラインですませられる未来の世界では、実際の店舗はレーザーカッターや3Dプリンターの設置された、デザインラボのような場所になるのでは、と川崎さんは予測します。このデザインラボでは、一人一人の身体に完全にフィットする、テイラーメイドの服を作れるようになります。こうした未来が実現すれば、布の切れ端ひとつ無駄はでず、完全にサステイナブルなファッション産業が可能となる、と川崎さんは語ります。
こうした考えのもと、川崎さんは現在、テジタルテクノロジーの応用によって、個人個人にぴったりな衣服を効率的につくることができるシステム『Algorithmic Couture』4の開発に取り組んでいたメンバーと共に、「Synflux」というサービスの事業化を予定しています。これは、日本の着物にみられるような直線的なパターンをベースに、AIを活用することでファッションの製造過程に関わる無駄を無くすことができるサービスです。

長方形の布に曲線のあるパターンを使用すると、布の約15%が端切れとしてゴミになってしまいます。「Synflux」では、機械学習のアルゴリズムを使用したパラメーターに則って、身体のサイズにあった最適なパターンを生成できます。
ここで作られるパターンは、着物のような直線的なものになります。これにより、端切れとなり捨てられるゴミを、出来るだけ減らす仕組みです。AIを用いてパターンを3Dに書き起こすことで、サステイナブルなだけでなく、着て心地よい衣服へとデザインされていきます。
量産型ではなくオーダーメイドで衣服を制作することで、製造過程も効率化し、エネルギーの消費も抑えられます。